第7回那須フロンティアフォーラム 障害の枠を超えて

第7回那須フロンティアフォーラム 障害の枠を超えて

家族が抱える問題がつくり出す~こどものトラウマ~

「トラウマ」とは一般的には、自然災害や犯罪によって生じるこころの傷という意味合いで認識されていますが、 田中先生はトラウマを広義にとらえ日常的な出来事、例えば「お前はバカだな」といった些細な言葉によって 子供の自尊心が傷つけられることもトラウマと捉えています。

幼い子どもは親の言うことは絶対であると考えがちなので、親が不用意に言った言葉を文字通りに受け止め傷ついて しまうことがしばしばあります。

また、自尊心を傷つけられた経験を持つ大人は知らず知らずのうちに同じことを 自分の子どもに行っていることがあります。


現在、社会的問題となっている「いじめ」、「不登校」、「家庭内暴力」などは子どもたちの問題としてのみではなく 子どもを取り巻く大人のトラウマが解消されていないために起きてくる問題ともいえます。


より良い子育てとはどんなものなのか・・・。皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

プログラム

開会挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・13:00~13:10
NPO法人那須フロンティア理事長 荻原喜茂氏
那須塩原市市長 栗川仁氏

講演・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13:10~14:00
「家族が抱える問題がつくり出す子供のトラウマ」
講師:田中万里子さん

休憩・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14:00~14:15

意見交換・・・・・・・・・・・・・・・・・・14:15~15:15
「トラウマが私たちの人生にどのような影響を与えるのか」
出演者:田中万里子さん コーディネーター:的場政樹氏

閉会挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・15:15~15:20

講師紹介

田中 万里子さん

サンフランシスコ州立大学名誉教授
POMR Inner Core 代表取締役社長
八戸大学客員教授

東京生まれ、1958年にアメリカに高校留学をきっかけに、国際的な仕事をする夢をもつ。
1962年に、East Asia Seminarに参加したことから香港の難民問題と取り組む。
1964年ハワイ大学のEast West Centerの奨学生となり、 ソーシャルワークの修士を得る。
以後、サンフランシスコ市の社会福祉局で、児童虐待、ネグレクトの問題と取り組む。
勤務を続ける 傍ら、児童虐待のために措置されたこどもたちの家庭復帰を短期に図るパイロットプログラムに携わる。
1983年、心理学博士習得。
1984年、サンフランシスコ州立大学カウンセリング学科に教授としてむかえられ、カウンセラーの養成に あたる。また、カミングス博士と訪日し、日本の精神衛生に携わる専門家と福祉関係者のトレーニングにあたってきた。
大学においては常に現場でつかえるセラピー、また人を癒すことができるセラピーをめざし、1999年にPOMR(Process Oriented Memory Resolution) を独自に開発。
POMRの臨床活動とトレーニングに従事するためにサンフランシスコ州立大学を早期に退官。
2004年3月にPOMRライフデザイン研究所の所長に就任、2005年9月に辞任。
2004年の4月にはPOMR Life Design, Inc.をアメリカで設立、社長に就任。
2006年1月に社名をPOMR Inner Coreに変更し現在に至る。

家族が抱える問題がつくり出す~こどものトラウマ~」開催報告

平成19年2月25日(日)、黒磯文化会館にて講演会を開催いたしました。7回目を迎える今回は、「子育て」をテーマにサンフランシスコ州立大学名誉教授、POMR Inner Core代表取締役の田中万里子先生に講演をいただきました。後半は、田中先生と袋田病院院長で当法人の副理事である的場政との意見交換を行いました。

1.講演

約40年間の臨床の体験を通じて、家族がつくり出す子どものトラウマについて、よりよい子育てとはどんなものなのかについて講演をいただきました。

トラウマを広義で捉えると、その時点の自分にとって衝撃的な全ての出来事にあたります。
子どもは少ない経験で出来事を判断するので大人にとっては日常の些細なことでも衝撃を大きく受けトラウマを形成することがあります。
例えば、「どうしてこんなことも出来ないの、馬鹿ね」という親の何気ない言葉でも子どもにとっては衝撃的な体験になり、その後の行動を潜在的に規制して子どもが自分らしく生きることを阻みます。
家族の問題は無意識に世代伝達され子どものトラウマは伝達されてしまいますが、意識的な子育てをすることでトラウマの形成は防ぐことができます。
そして、まずは自分自身を癒すことが問題解決に繋がるというお話をいただきました。

2.意見交換

会場専門職より
Q.傷ついた子をどう支援していけばよいのでしょうか?

A. 辛いものを辛いとしてあげると相手はほっとします。辛いものをつらくしないことが問題を大きくさせるでしょう。気持ちを汲むとこころが開かれ、支えになります。何かあったときに子どもが話せる環境を整える意味でもこころの戸を開けておくことは大事なことです。

的場先生より
Q.もう傷つきたくないと失敗を恐れてひきこもる子どもについてどう思われますか?

A. 失敗はいけないものとして、失敗をしないようにと接することや失敗したことを罵倒することは子どもにとってマイナスのエネルギーになってきます。アメリカの環境においては、「ナイストライ!」という言葉をよく遣います。子どもが試したこと自体を褒めることや失敗してもそこからどんなことを学べるかを一緒に考えていくことで、子どもは失敗を恐れずプラスのエネルギーに変えていけるようになると思います。

参加者の声

講演を通じて”気づいた人“になった今、こどもや同僚、家族に接するとき、いつか子育てするとき、気づかないうちにトラウマを与えないよう意識した日常を送ろうと改めて思いました。
(20代女性)

 私は二児の子育てをする専業主婦です。子どもに対してちょっとした答え方、話し方に気をつけるようになりました。毎回は出来ませんが「ナイストライ!!」という言葉かけを実際に生活の中で使うことを意識するようになりました。今回のお話しを聞いて自分の受けた子育てが次の世代に引き継がれると言うことを改めて気づかされる時間でもありました。
(30代女性)

参加者の声

当日は383名もの方が参加して下さり、その多くは親御さんや子育て支援に関る方々でした。会場で熱心にメモを取る方の姿、意見交換の際質問用紙にぎっしり書かれてあった方の姿を目の当たりにして皆さんの子どもとのコミュニケーションのあり方への関心が高いことを直接感じました。参加者の多さと関心の高さに講演会を開催できた意義の大きさを実感できたと同時に、今後の活動に繋げて行きたいと思いました。

講演会の趣旨に賛同してくださり後援、協賛にご協力いただいた方々に深く感謝いたします。今後も地域の皆さんと協力しながら身近なメンタル・ヘルスのテーマにて、ともに考えていける講演会を開催していきたいと思います。